うち経済的な理由をあげた人は約7割――。

生理用品「elis(エリス)」を展開する大王製紙が、さまざまな理由から生理用品の入手に困っている学生にナプキン1年分を無償で供与する「奨学ナプキン」制度を始めた。 1000人の募集に対し、応募は9000件を超えた。 冒頭の数字は応募時のアンケートだ。今の日本には、「生理の貧困」に苦しむ女性が潜在的に多くいることが、浮き彫りとなった。

「ナプキン代のことを考える時間が激減し、気持ちがとても楽になりました」 「これで娘に恥をかかせないですむ」

「奨学ナプキン」の奨学生に選ばれたある親子は、生活にも心境にも大きな変化があったと語る。 芽依さんが高校に入学したタイミングから、どんどん家計は苦しくなった。 きっかけは、新型コロナウイルスの流行が始まったこと。 広子さんは小売店のレジや、事務のアルバイトなど複数の仕事を掛け持ちしているが、営業時間の短縮、さらには職場で陽性者が出たことにより仕事が減り、残業代も無くなった。 「娘の高校入学時からコロナが始まり、とうとう高3になっても終わる気配のないまま……。コロナ前までは裕福でこそなかったけれど、生活はできていましたが、食費や光熱費など、生活するための最低限の費用でさえ家計を圧迫してくるようになりました」

「生理用ナプキンももちろん生活必需品ではあるのですが、どうしても後回しになり、家計的にもかなりネックになってしまっていました」

芽依さんが中学生の頃は、経血の量も少なめだったし頻度も安定しなかったため、「ある意味、ナプキンの消費を抑えられる要因にもなっていた」。

成長に伴い生理の出血量も増えてきた芽依さんには、これまで使っていた比較的安価な「羽なし昼用」のナプキンでは間に合わない。 大きめのナプキンは1枚あたりの単価も高く、生理用品代がさらに家計を圧迫するようになったという。

「娘は生理不順のため、予期せぬ時に生理が来ることがあります。しかし家にストックがないので、その場しのぎで安い少量のものを買うしかありませんでした」

芽依さんが学校から帰宅するまでになんとか家中のお金をかき集め、ナプキンを買ったこともあったと振り返る。 それでも足りない時は、学校の保健室で相談したり、ナプキンを常に携帯している友人に頼んで1枚譲ってもらったりしていたという。 しかし、羽なしナプキンはズレや漏れが発生しやすいため、生理期間を不安な気持ちで過ごすことが多かったという。

学校の部活や行事の際は、ナプキンだけでなくタンポンが必要になる時もあった。 こうした「必需品」の購入のため、通帳の残高を確認しながら「今月、生理用品代にあてられる分」を細かく計算する日々が続いた。

生理用品のメーカーが、ナプキンを1年間無償でプレゼントしてくれる。こんな試みがあるのか。

芽依さんも「奨学ナプキン」に乗り気だったため、応募した。 これをきっかけに、芽依さんの生理に対する意識にも変化が出てきたという。 「ママが高校生の時にこういう取り組みはあった?」と聞かれた広子さんは、「ない」と答えた。

「生理は今に始まった話ではないのに、なぜ今このような取り組みが生まれたのか?」疑問を持った芽依さんはインターネットで生理に関する情報を調べ、「生理の貧困」の現状、そして今、社会問題としてクローズアップされつつあることを知ったという。

自身の置かれている状況は、自分だけの問題ではない。あまり語られてこなかっただけで、悩んでいる人は多く、自分もその当事者の一人なのかもしれないという自覚が生まれたのだ。

友人に「ナプキン、もらっていい?」とお願いするばかりだった芽依さんは、「前に助けてくれたお返しに」とナプキンをわけてあげることができ、喜んでいたという。

特にうれしかったのは、夜用ナプキンが手に入ったことだ。 サイズが大きく吸水量も多い夜用ナプキンは、これまで高価で買えなかった。やむをえず就寝時も昼用ナプキンを使い、経血が漏れて布団が汚れるのを防ぐため、バスタオルを布団の上に敷いて寝ていたという。 しかし、セットに入っていた夜用ナプキンを使うことで、安心して眠れるようになった。 「選ばれてから、ナプキン代のことを考える時間が激減しました。生活水準は変わりませんが、気持ちはとても楽になりました。もう通帳の残高を確認しながら生理用品代を計算する日々を送らなくていいのは、本当にありがたいです」 という広子さん。

「生理」と「ナプキン」。 男性にとっても女性にとっても、公の場で話すには少しデリケートな話題に感じてしまう言葉だが、そうしたイメージこそが「生理の貧困」への無理解、透明化につながっているのでは、と広子さんは考える。

「今回のように学生に無償で生理用品を提供する支援がもっとあってほしいです。公衆トイレなどに自由に使えるナプキンを置くのもよいですが、衛生面の不安や大量に持ち帰るなどトラブルも起きかねないのも分かる。『奨学ナプキン』のように、自宅に配送してくれるのは、とても理にかなっていると思います」

「性別を超えた理解のために、いっそ男性誌に広告を載せるぐらい強気にPRしてもらってもよいのでは。生理の貧困なんて言葉を、次の世代に残さないでほしいと思っています」 情報や質問も気軽にお寄せください🙌 友達登録をよろしくお願いします。

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